非日常しか伝えない世界

ニュースを追っていて、たまに思うことがある。

「非日常的な世界しか伝えていないのではないか」

事件や事故をはじめ、政治や経済の諸事情はわれわれの普通の生活とかけはなれたところにある。ニュースとはそういうものと言われればそれまでだが、猟奇殺人や大統領の言動などは一般市民の日々の生活とほとんど接点がない。

以前、友人が訊いてきた。

「アメリカ人って普段なに食べてるの?」

テレビや映画のなかにはアメリカ人の食事風景がしばしば登場するが、それは設定された場面にすぎない。普通のアメリカ人が朝食に何を食べているのか、あまりにも普通すぎてわからない。

中西部オハイオ州の4人家族の朝食はどういった風景なのか。

まずコップ1杯のオレンジ・ジュースを飲み、数種類そろえてあるシリアルを選んでボウルに入れ、低脂肪ミルクを入れて食べる。コーヒーも飲むがデカフェ(カフェイン抜き)を選択する人も多い。あとはバナナやリンゴといったフルーツか。何も食べないで通勤途中にスタバによってドーナツとカフェラテで済ます人もいる。

アメリカの朝食の典型と思われるスクランブルエッグや目玉焼き、ソーセージを食べる人は今でもいるが、それはホテルでの朝食であり、卵料理を朝から作る家庭は過去20年でかなり減少している。もちろん食べるものは個人差が大きい。けれどもアメリカ人の朝ご飯は意外にも質素だ。

ただこうした普通のことがメディアで語られることは少ない。事件や事故は伝えられるが、日常が伝わらないのでいつまでたってもアメリカの全体像が見えない。

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