しがない稼業

ジャーナリストという仕事がら、人に話をきくことは多いが、実はきかれることも少なくない。1対1で向かい合って話をする場合もあれば、電話だけでコメントを取られることもある。

その場合は電話をかけてきた相手を知らないことの方が多く、まったく会ったことのない人(ほとんどが編集者か記者)としばらく話をすることになる。

昨日も自宅の電話番号をどこかで調べていて(他の編集者からきいている)、突然、「先日のオバマの失言ですけども、、」と振ってくる。

先方は私の得意分野を知っているので、これだけで何かを語ってくれると思っている。こちらも一応それで食べているので20~30分話をする。

媒体(新聞や雑誌)の名前を知らないことはないので、答えることが多いが、別に答えなくてはいけない義務はない。コメントをださないこともあるが、私も普段はコメントをもらう立場なので、なるべく答えるようにしている。

新聞であれば翌日、週刊誌では数日後に私の名前とコメントが紙面に載る。けれども私が話をした内容が100%正確に引用されたことはない(たぶん)。

ときには「こんなこと言ってないよ」という場合もある。メディアが引用するコメントというのは、それほど正確さに欠ける。同業者の私が言うのだから間違いない。

彼らの言い分として(私もか?)、日本語の話し言葉は文章にするとほとんどが読めないシロモノであるということだ。つまり手をいれて余分な言葉を削り、文章の体裁を整えないとプロの文章にならないのである。

その点、テレビでのコメントは嘘がないように思われるが、編集の仕方次第で意味合いが違ってくることがあるので、気をつけないといけない。

そうなるとインタビューをすべてそのまま映像で流したり文章にすればいいのだが、それではあまりに長くて受けとる側はあくびをしてしまう。

そう考えるとメディアの仕事は「しがない稼業」なのかとも思う。だが伝えなくてはいけないことがある。誰かが伝えなくては、との思いでやっている。

さあ、今日も原稿書きである。