タクシーの中へ(2)

3月4日のブログ「タクシーの中へ」を書いたあとも、相変わらず乗っている。

50歳前後と思われる運転手さんは最初から笑顔だった。

「お待たせいたしました」

いろいろと話ができるかもしれない。そんな予感がしたので少し嬉しくなる。

運転手さんの方から話をしてくる話題は天気とスポーツ、その日のニュースや景気などが多い。悪くはないが、深い話ができそうな気がする時は、私はいきなり「ちょっと訊いてもいいですか」と言って切り込むことがある。

「いちばんおしゃべりなお客さんというのはどういう人ですか」

ドライバーは困った様子もなく即答した。

「おばさんですね。乗ってから降りるまで、自分のことだけを話していく人がいます。男性、特に若い男性はしゃべらないです」

男性の客は、若者でも中年でも、1人で乗車するとほとんど無口だという。恥ずかしがり屋が多いというより、他人とコミュニケーションを積極的にとることに違和感があるのかもしれない。もちろん酒が入ると一変する場合があることは推察される通りだ。

「カップルで乗られた時は女性よりも男性の方が饒舌なことが多いですね」

密室の中に一人だけ見知らぬ人(ドライバー)がいると、普段の会話とは微妙に言葉使いや内容が変化する。男の方が他者に対しての自己顕示欲が強いのかもしれない。

「いやあ、よくしゃべるオヤジだった」と思われているかもしれない。それでも訊きたいことがあるし、話したいこともある。

そういえば、妻から言われたことがあった。

「ちょっとおばさん、入っているかも」

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