初の直接対決:オバマ対ロムニー

投票というのは、1人の政治家に自分がどういった期待をし、イメージを描けるかが如実に表れる場である。

オバマはすでにアメリカの行政の長として4年弱、職務にたずさわってきたので、有権者は今後の4年間をイメージしやすい。4年前に比べると、「チェンジはいったいどこへいった」とか「財政赤字は増大しつづけ、経済は依然として復調していない」という批判もある。来年早々には「財政の崖」といわれる大幅増税と歳出削減が実施される可能性もあり、不況への再突入も取り沙汰されている。

ただ先日、ロムニーが低所得者や中流層を軽視する「本音を語ったビデオ」が流出したことで、共和党の人間でさえも彼が大統領になった時のイメージを悪化させてしまった。

以来、オバマ対ロムニーの支持率は2ヵ月前の僅差から、オバマが5%ほどリードする状況に変わった。ここからロムニーが挽回することは多難である。

いまロムニー陣営が狙うのは10月3日にコロラド州デンバーで行われるオバマとの初の直接対決(討論会)である。だが、過去10年以上、討論会で支持率を回復することは少なくなっている。1960年のケネディ対ニクソンのテレビ討論時代とは違う。

というのも、インターネットの発達で有権者に流れる情報量が以前とでは比較にならないくらい増えたからだ。テレビ討論を観てどちらの候補を選ぶかを決める人は少ない。すでに支持候補を心に宿す人がほとんどだ。

ナマ番組のテレビ討論は候補者の政策や言い分の確認をする場になってきている。

となると、ロムニーが新たな追い風を背に受けることはあまり期待できない。昨夏から述べているように(オバマ対ロムニー )、オバマ有利で(再びオバマ対ロムニー )選挙当日を迎えるはずだ。(敬称略)

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by the White House

新しい英語(2)

18世紀のイギリスにサミュエル・ジャクソンという文学者がいる。

彼は詩人であり脚本家、ジャーナリスト、そして辞書の編纂も手がけていた。彼が編纂した英語辞典はのちの英語に大きな影響を与えた。というのも、言葉の意味を再考し、実際にどう使われているかを探っただけでなく、正しい用法にも踏み込んだからだ。

日本語でも時代と共に新しい言葉がどんどん生まれる。また古くからある言葉に新しい使い方が加味されたりもする。歳をとると、新しいものに対する抵抗感が強くなって新語を使わない傾向があるが、私は相手に不快感を与えなければどんどん使うようにしている。

先週、英単語で「Blip(ブリップ)」 という言葉に出会った。

以前からある単語である。テレビやラジオ業界で不適切な言葉を削除した時に使う「ピー」という音のことである。他の意味としては、レーダーのスクリーンに現れる映像も指す。インターネットの英和辞典ではその2つがでている。

手元にある研究社の英和辞典を調べてみた。12万語が収録されている英和辞典には2番目のレーダースクリーンの映像という意味だけが出ていた。

だがアメリカでは近年、日常会話の中で上記の2つとは違う意味でよく使わる。

This problem is a temporary blip.

意訳すると「これはちょっとマズイんじゃないの」という感じである。「いつもとは違うこと」というニュアンスの単語として使われている。

これからも「新しい英語」に出会った時にはご紹介していきたい。

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フェイスブックが幕を閉じる日が近づいている 新規サービスが続々登場、すでに淘汰の段階に入った

「ジャパン・ビジネス・プレス(JBPress)」というネットマガジンの連載原稿。いつもは貼り付けるだけですが、今回はこれまでにないほど多くのコメントを頂いているので、お礼もかねてヒトコト記します。

ツイッターで記事をツイートした方は1200人超、フェイスブックの「いいね」のクリックは2000件を超えました。もちろん「いいね」のクリックで批判を書かれる方もいます。感情的な不満をぶつけられる方もいれば、冷静な考察をしてくださる方もいて勉強になります。

内容が内容なだけに、「いいかげんな記事だ」と言われる方もいれば、「フェイスブックが5年で潰れる?もっと早いでしょう」と書かれる方もいて、全方位的な意見をうかがえました。

原稿内にも記しましたが、月刊文藝春秋9月号に「フェイスブックが消滅する日」というタイトルの記事を書き、これはそのダイジェスト版です。そちらもご高閲いただければ幸いです。もちろん将来のことですから仮説ですが、アメリカ取材で論を進めました。

この場をかりてコメントをして頂いた方々に感謝を表します。ありがとうございました。

不穏な尖閣

これまでも当ブログで尖閣問題については私見を述べてきた(尖閣は実行支配こそがカギ )。

2年前、中国人船長の勾留問題が起きたが、いまは当時と比較にならないくらい中国側での反日感情が強い。個人的にはこうした時の外交交渉に携わりたいくらいである。

もしかすると中国と限定的な交戦にまで発展するかもしれないが、それを食い止めるのが外務省と官邸、さらに日中の議員同士の交渉である。

限定的とはいえ、戦争がもたらすプラス要素はほとんどない。それを阻止するあらゆる手立てを中国共産党指導部としなくてはいけないが、もちろん尖閣を譲るといったオプションは日本にはないし、してはいけない。

尖閣はこれまで日中間の暗黙の了解で、日本の実行支配が効力をもってきた。それでも日本側は中国漁船が「周辺海域」で操業するのを黙認していた。こうした微妙な緊張関係が実は大切である。

外交関係というのは、いつでもお互いが手をつないでルンルンといった間柄でなくていい。緊張した関係であっても、それが平和的な現状維持であれば何の問題もない。むしろその方が好ましいくらいだ。

だが、どう見ても野田政権内に中国共産党指導部との太いパイプがない。ほとんど中国と話がついていないように思える。共産党ももちろん尖閣に軍事侵攻した後の短期的な利益は見いだせないだろうから、大それた真似はしないだろうが、万が一もあり得る。

いま中国国内では反日感情の発露が暴動という形になっているが、日本は冷静にやり過ごすべきである。両国にとってすでに大きな損失になっているが、最大の危機は中国の空挺部隊が尖閣に上陸し、中国艦船が尖閣周辺の洋上に通常配備され、武力による実行支配にでたときである。

82年のフォークランド紛争で、イギリス首相のサッチャーはもちろん交戦を選び、アルゼンチンと戦って3ヵ月後に白旗を揚げさせた。

野田政権は交戦に至らないように交渉力を発揮しなくてはいけないが、最悪の事態になった時には迎え撃つガッツも必要だ。(敬称略)