フェイスブックとダーウィニズム

先日、ナスダックに新規株式公開(IPO)したばかりのフェイスブック。日本だけでなく、世界中で利用者数は伸び続けている。すでに9億人を超えた。

まだ利用していない人がいると、「エッ、まだやっていないの?」という言葉を吐く人さえいる。私も利用者の1人だが、以前より利用回数は減った。

2004年に起ち上げられたフェイスブックは、07年と08年で利用者を一気に拡大させた。大統領選でオバマが使ったことで、若者を中心にその利便性が認められた。だが私はその波に乗り遅れた。怖かったからである。

当時、ホームページ(のちに当ブログに移行)を始めて何年も経っていたので個人情報の漏洩などは心配していなかった。ただ、新しいものに対する恐怖があり、なかなか入り込めずにいた。

だがワシントン・ポスト記者のボブ・ウッドワードが利用者だったことが、背中を押した。彼の「お友だち」リストにはすでに数千名がリストされていた。彼のリストに入り、さらにアメリカの友人たちの多くが利用者だったので09年8月、ついに私も仲間入りした。

それから「お友だち」を増やし始め、1年ほどで200名を超えた。ほとんどがアメリカ人だった。日本ではまだ認知されていなかったからだ。

昨日、あるアメリカ人記者と話をしていると、「ダーウィニズムがフェイスブックに降りかかってきたな」という興味深いことを口にした。しばらく2人でそのことについて話し込んだ。

それはフェイスブックが自然淘汰の波にさらされ始めたということである。はっきり述べると「潰れる可能性もある」ということだ。

IPOしたばかりの会社で、世界の利用者は今後15億人以上いくかもしれない有望な企業であるにもかかわらずである。

なぜか。

実はアメリカでフィエスブックの利用者は急激に減ってきているのだ。それも過去3ヵ月くらいで顕著な現象だ。脱会するのではなく、アクセスしなくなっているということである。

前出のウッドワードの「お友だち」は軽く4000人を超えているし、知り合いのジャーナリストも3000人級の「お友だち」を持つ人が何人もいる。だが、ウッドワードは昨年秋以降、フェイスブックに書き込んだ形跡がない。他の知人たちの中にも「月イチ」くらいになったという人がいる。

飽きてきたのだ。実は私も過去1年、利用回数が格段に減った。以前は毎日アクセスしたが、いまは3日に1度ペースである。日本ではスマートフォーンの影響で、まだまだ利用者は伸びているが、本家アメリカでは停滞期に入ったと思える。

利用者になるとしばらくは「お友だち」づくりで一生懸命になるが、2年も経てばフーッと一息つく。日々、並んでいる書き込みは究極的には見なくてもいい内容が多いからだ。

一方、企業のマーケティングツールとしてはまだまだ使い勝手がある。創設者のザッカーバーグの狙いもたぶん、そこだろう。

しかし個人利用者が今後どれくらいの期間フェイスブックをやり続けていられるか、大きな疑問である。というのも、携帯電話や電子メールは必須のツールだが、フェイスブックはなくても何も困らないからだ。むしろ、企業の調査ツールとして使われる機会が増えるかもしれない。

アメリカはこの点で、どの国よりも先を歩いている。急に崖の向こうに落ちるかもしれないということだ。(敬称略)