尖閣は実行支配こそがカギ

都知事の石原の発言で、尖閣問題が再浮上している。この問題にどう対処したらいいのだろうか。

石原のように一方的に中国を挑発し、東京都が尖閣を買い取ることで事態をスムーズに収拾できるならいいが、そうはならない。中国が石原の思いどおりに反応してくれたら問題はないが、彼らの感情を逆撫でするような言動では無理である。いかに石原が外交に不向きな政治家であるかがわかる。

それでは尖閣は中国のものなのか。いや、日本が領有権を持っている。実行支配しているのは日本である。2年前に尖閣でおきた中国船籍の船長拘留事件で述べたように(尖閣問題の解決のしかた)、国際的な見地から、実行支配している国家に実質的な領有権がある。

一方で、「どこどこは日本固有の島」とか「もともと日本の領地だった」という言説はほとんど意味を持たない。そんなことで領有権は主張できない。フランス・ドイツ国境のアルザス・ロレーヌやアルゼンチン沖のフォークランドが好例である。

アルザス・ロレーヌの代表都市ストラスブールは現在フランス領である。だが、もともとはドイツ領でいまでもドイツ語系のアルザス語が話されている。1638年のウェストファリア条約でフランス領になったあと、1870年の普仏戦争後にドイツ領に、第1次世界大戦後にフランス領、ナチスドイツによる奪還で再びドイツ領、そして第2次世界大戦に再度フランス領になっていまに至っている。ドイツ国内には再び奪い返す機運はない。

フォークランドもイギリスからは遠く離れているが、アルゼンチンが戦争に負け、いまでもイギリス領として統治されている。「もともと我が国の領地だった」という主張は通用しない。これまで戦争で国境が策定され、領有権が移るのが常だった。いってみれば野蛮な世界である。

尖閣は海上保安庁の船舶や航空機が領海を偵察して事実上の支配が続いているので日本の支配下にある。ただ中国漁船が付近を操業しており、それは日中間の暗黙の了解となっている。2年前の衝突事件をのぞけば、戦火を交えるほどの軋轢には発展していない。

尖閣については日本が実行支配を続けながら、穏やかな笑顔を浮かべて中国と話をすればいい。

「いまは日本の支配下にありますから!」

相手も微笑んでしまうくらい閑閑たる態度でいることである。(敬称略)