アメリカ大統領選、大きな変化ナシ

2月7日に行われた予備選で、前上院議員のリック・サントラムが3州(コロラド州、ミネソタ州、ミズーリ州)すべてで勝利を収めた。「エーッ、それで『大きな変化ナシ』とはどういうこと?」と思われるかもしれない。

これまで前マサチューセッツ州知事のミット・ロムニーがトップランナーとして予備選を先導してきた。サウス・カロライナ州では元下院議長のニュート・ギングリッチが勝ち、フロリダ州でロムニーが巻き返したので、今後はロムニーVSギングリッチの戦いになると多くの人が予想した。

けれども、支持率で低迷していたサントラムが3州で勝ち、共和党レースは混戦になったとの見方が日米のメディアに広がっている。あれほどギングリッチに勢いが出てきたと報道していたメディアはいったい何と釈明するのだろうか。

私は昨年からギングリッチは「勝てない。終わっている」と述べてきたので、今も同じである(テレビ効果 )。サントラムも3州をものにしても、今後ロムニーを打ち落とせるだけの資金力や組織力があるとは思えない。

サントラムの勝利は、共和党保守派の「ロムニーだけは選択したくない」との意思表示による消去法による結果であろう。それは同時に「ギングリッチも選択したくない」にもつながる。

過去1年半の支持率の推移をみると、ギングリッチもサントラムもジェットコースター状態で、急な上昇カーブを描けば、あとは下るしかないのは人の営みの常である。しかしロムニーだけは過去1年半、全米レベルで20%から25%を推移し、現在は30%を超えている。いわゆる最も安定した支持率をものにしている。

日本のメディア報道はアメリカの報道内容の追随なので、新しい事実も分析もほとんどなく、面白いようにアメリカのテレビ・新聞に翻弄されている。

日本からアメリカに行った特派員のほとんどは、生まれて初めての大統領選取材なので仕方がないとも言えるが、自分の目で書いていないという証拠だろう。大胆にモノを書けない、言えないという弊害が新聞やテレビの報道に蔓延している。それが結局は画一的な報道内容に終始することになっている。(敬称略)