オバマの新たな敵

負けることはほとんど考えられない、くらいである。

誰がかと言えば、オバマがである。

共和党の予備選で候補同士が傷つけ合っている中、オバマは平然と選挙資金集めに奔走している。3月1日、ニューヨークではオバマの支援者が1人3万5800ドルというディナーパーティーを開く。

長年大統領選をみていると、ごくごく普通の催しなのだが、オバマの選対は水面下でこうした献金活動を繰り返しているのだ。オバマがこれまでに集めたカネは、共和党のトップを走る前マサチューセッツ州知事ロムニーの約2倍である。

戦後67年の米国史で、こうした状況で現職が負けた例はない。より多くの選挙資金を集めた候補が勝つ。逆に私はこの法則が、誰かに破られてほしいくらいである。カネで票が買えるという流れを誰かに断ち切ってほしい。

28日早朝、ロムニーの選対委員長マット・ローデスからメールが入った。ローデスと個人的に知り合いなわけではない。単にジャーナリストとしてメルアドを先方に伝えてあるだけだ。

メールには驚くべき内容が書かれていた。

オバマ選対がロムニーを攻撃する選挙活動をスタートさせたというのだ。28日にはミシガン州で予備選がある。そこでロムニーのライバルのリック・サントラムを勝たせるために、オバマ側が動いているというのだ。

オバマが共和党の特定候補を間接的にでも支持する動きは前代未聞である。仮にも大統領だ。それだけ、11月の本選挙ではロムニーと戦いたくないということだろう。(敬称略)

ある誕生日に考える

友人のフランス人が先日、40歳を迎えた。

フランス家庭料理の先生もしていた女性だ(クッキング・スクール)。現在はパリに戻っているが、誕生日にバースデーメールを送ると「40歳は本当に楽しみにしていたので嬉しい」と返ってきた。

この言葉は本心である。というのも以前、何度も早く40代になりたいという言葉を耳にしていたからだ。私の周囲には歳を重ねるごとに、「ああ、また歳とっちゃう」と嘆く女性はいても、「嬉しい」という言葉を吐く人はほとんどいない。

彼女も「歳をとれば顔の皺はふえるし、体力も落ちる」と口にするが、肯定的要素の方が多いという。まず、40代でこそ着られる服に袖を通せるようになる。さらに人間としての厚みが増して、人との会話(特に男性と)がさらに充実する。

彼女は40代こそ人間としての魅力が増幅し、成熟度がアップすると語っていた。それはフランス人らしい価値観であるが、その考え方の背景に思いを馳せると男性の役割が大きいと言わざるをえない。 

                                        

    

                       

つまり、若い方がいいと思いがちな日本人男性の言動を連日見聞きしていると、40代は「おばさんの領域」に確実に歩を進めること以外になくなってしまう。若ければ若いほどいいという見方の弊害である。

そうなると、40代でも「せいぜい頑張ってみる」というセリフを吐くのがやっとになってしまう。男性の側でも同じ論理が使える。

もちろん例外と呼べる人たちはどこにでもいるが、極めて少ない。日本でAKB48が人気を博す理由の1つがここにある。

残りカスのサントラム

アメリカ大統領選の共和党レースで、元ペンシルバニア州上院議員のリック・サントラムがミット・ロムニーを抜いて、支持率でトップに躍り出ている。

昨年末まで支持率で5%を超えることはなかった候補である。1月末でも15%前後をさまよっていた。だが元下院議長のニュート・ギングリッチの支持率が急下降したのと反比例するように、サントラム支持が急拡大。

共和党保守は穏健派のロムニー以外で候補を擁立したいとの思いが強い。つい数週間前まではギングリッチにその思いをたくしていたが、ロムニー陣営によるネガティブキャンペーンによってギングリッチは命を取られたといえるほど打撃を受けた。もう復活はない。

それに代わって登場したのが若いサントラムだ。

       

                            

ブッシュ前大統領と似た外交路線を信奉し、保守本流とよべる社会政策を主張している。そこに共和党右派勢力は、「我々の意見を代弁してくれる候補がいた」といった安堵感を覚えもする。

だが全米レベルでの選挙基盤は脆弱だ。選対のホームページも大統領候補としてはあまりにもお粗末な出来である。資金もロムニーやオバマに比較すると無きに等しい。消去法の最後に残った候補という印象だ。

本当に優れた候補であれば、昨夏の時点で頭角を現してしかるべきだった。だが、ミシェル・バックマンが消え、リック・ペリーが辞退し、ハーマン・ケインも脱落し、ギングリッチが終焉を迎えて、まるで「残りカス」のようにそこにいたというのがサントラムである。

個人的な思いを書かせて頂ければ、ロムニーが勝ち進んで今年11月にオバマと対戦することの方がオバマ陣営にとっては喜ばしいはずだ。というのも、オバマ陣営は過去1年、いかにロムニーをたたき落とすかの戦略を練り込んできているからだ。

サントラムは未知数が大きい。その分、捕らえにくい。(敬称略)

抜き返された!

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           デトロイトのGM 本社

アメリカの自動車メーカーのビッグ3(GM、フォード、クライスラー)が失墜し、もう立ち直れないと噂されたのは数年前である。

ところが16日に発表されたGMの2011年通期の純利益は76億ドル(約6000億円)。過去最高を記録した。販売台数でも首位に返り咲いた。

ビッグ3の中でも特にGMについてはこのブログで何度も書いてきた。08年12月には早く破産させて、再建に向かった方がいいとも記した(GMの終焉 )。

10年に出した拙著でも、今月出した本でもアメリカの製造業は死なないと述べた。

GMのオハイオ工場を始めとする多くの工場ではすでに24時間3交代制のフル稼働に入っている。夜中でもラインは動いているのだ。それほど売れている。

日本の自動車メーカーはどうなのか。日本自動車工業会(JAMA)に訊くと、「それについては把握していない。各メーカーに問い合わせてほしい」というので、トヨタの広報に訊いた。

「2直(交代制)が基本で、真夜中に製造ラインを動かすことはないです。いくら製造が追いつかないような状況であっても、作業員の健康上の問題などを配慮して夜中はラインを止めます。将来も3直はないと思います」

GMのように夜中も製造ラインを動かした方がいいということではない。トヨタはトヨタの経営スタイルがある。

ただ「死に体」と言われてきたアメリカの製造業は「死なない」ということである。

今日この話を知人にすると、彼はいった。

「堀田さんのアメリカへの愛がひしひしと感じられます」

「いや、ただかぶれているだけですから」

そっと返すしかなかった。