アメリカ、国民皆保険へ

 by the White House

やっとこぎつけた。

連邦議会下院が21日、懸案の医療保険改革法案を可決した(写真は法案が可決した瞬間のホワイトハウス)。オバマはもちろん法案に署名するので、やっとアメリカにもヨーロッパ諸国や日本のような国民皆保険がうまれることになる。

しかし共和党議員は全員が反対した。いまの議会はこの分野ではみごとに二分されている。日本の政党のような党議拘束がないにもかかわらず、共和党議員は誰一人として賛成票を投じなかった。むしろ民主党から34名の反対票が入った。

共和党が反対する理由は議員によっても違うが、「保険業界が政府にコントロールされる」、「財政赤字がさらに増える」、「月々の保険料が増える」、「税金が無保険者に使われる」といった内容である。

保守系新聞ウォールストリート・ジャーナルは社説で「国民皆保険は健保システムと国家財政の破壊であり、アメリカの自由闊達な企業家精神と自由社会の気質、政府の役割に大きな疑問符が投げかけられる」とこきおろした。

だが、批判が本当に的を得ているかどうか、さらにアメリカ社会にとって有用なのかどうかは始めてみないと判明しない。私はアメリカが大枠の国民皆保険を作ったことは喜ぶべきことであり、「国家の義務」であるとの立場なので民主党の立場を支持する。課題の一つだった公的保険制度を創設できなかった点で、むしろ改革は手ぬるいと考える。

21日下院で通過した法案は、昨年一度通過した法案よりもさらに分厚く(2309頁)、コンピューターでダウンロードして条項を速読すると目が痛くなる。

法案内容の大半は、実はオバマが07年の大統領選で語った内容に準拠していることが再確認できた。というのも、当時オバマ案が成立すると10年間の政府負担は85兆円程度で、無保険者の1500万人ほどは救えないということだったので、ほぼその通りに「落ち着いた」という印象である。

ヒラリー案の方がむしろ徹底していて、無保険者全員をカバーし、予算もオバマ案の1.5倍ほどの規模だった。だから、オバマ案の方がより現実的であり、「とにかく国民皆保険をつくる」という意気込みが法案成立へと押し上げる結果になった。

ひとたび制度ができれば他のシステム同様、修正案で微調整し、将来は本当の意味での国民皆保険にしていけばいい。(敬称略)